モスクワの音楽ホールと読書「小澤征爾さんと、音楽について話をする」小澤征爾×村上春樹

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モスクワに住んでいて幸せだなと思うことの一つが、クラシックコンサートやバレエがとても身近な存在だということ。

チケットが安くて気負わずに普段着で行けるホールや劇場がたくさんあります。

モスクワと言えばボリショイ劇場がなんといっても有名ですが、個人的には下記の3つのホールもおすすめです。

 

チャイコフスキー コンサートホール

地下鉄マヤコフスカヤ駅のすぐ真上に立つ、モスクワで最も大きいコンサートホールの一つ。1940年に開館し、戦時中も閉鎖されることなくコンサートが行われたそうです。ドイツ軍の砲撃が始まると、聴衆は地下の防空壕に避難したとか。そこまでしてコンサートを行い続けたモスクワ市民の音楽への情熱がすごいと思います。

戦時下にチャイコフスキー・ホールが開館 - ロシア・ビヨンド

現在もほぼ毎日公演があり、クラシック音楽だけでなく、(私の大好きな)モイセーエフバレエ団などの舞踏団やオペラなども行われています。私が一番足繁く通っているホールです。

ameblo.jp

スケジュール確認、チケットの購入は下記のウェブサイトから可能です。

チャイコフスキー コンサートホール https://meloman.ru/hall/koncertnyj-zal-chajkovskogo/

モスクワ音楽院大ホール

地下鉄ビブリオテカ駅とアルバツカヤ駅の間に位置するモスクワ音楽院(モスクワ コンセルヴァトーリ)。世界三大音楽教育機関の一つで、その大ホールは4年に一度のチャイコフスキー国際コンクールが開催される場所としても有名です。去年(2019年)は日本人ピアニスト藤田真央くんが2位を受賞しましたね。私も会場で見ていましたが、スタンディングオベーションと拍手の大きさがが他の演奏者とは格段に違っていました。

祝・藤田真央 第16回チャイコフスキー国際コンクール2位入賞 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

スケジュールの確認、チケットの購入は下記のウェブサイトから可能です。

モスクワ音楽院大ホール https://meloman.ru/hall/bolshoj-zal-konservatorii/

※チャイコフスキー国際コンクールのチケットはこちらに表示されなかったので、窓口に買いに行きました

ザリャジエ ホール

場所はクレムリンのすぐお隣、ザリャジエ公園内にあるホールです。プーチン大統領の提案で建設され、2017年に完成しました。モダンな外装は公園の景観とマッチするように設計され、伝統ある上記二つのホールとはまた違った印象です。

ホール内の目玉はモスクワで一番大きな楽器であるパイプオルガン。フランスの老舗ムライセンによって、このホールのために特別に作られたもの。2020年2月29日がこの「楽器の王様」の就任日となるそうです。

スケジュールの確認、チケットの購入は下記のウェブサイトから可能です。

ザリャジエ ホール https://zaryadyehall.com/en/

 

さて、もともとショスタコーヴィチが大好きで、ロシアに転勤が決まった時は「ショスタコーヴィチがたくさん聞ける~」と喜んだのですが、いくらロシアといえども毎日やっているわけではなく(そりゃそうだ)。

でもチケットが安いので他の作曲家もよく聞くようになりました(マーラーとか)。食事に関しては偏食じゃないのですが、音楽については偏食でした(笑)

で、そんな偏食(偏音!?)な私が読んで面白かったのが「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(小澤征爾×村上春樹)です。

小澤征爾さんと、音楽について話をする (新潮文庫) [ 村上春樹 ]

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私は楽譜も読めないし、楽器も演奏できないし、ただオーケストラを聞くのが好きというだけなので、知識不足丸出しで書いてしまうことをお許しください。

この本は小澤さんが若い頃のカラヤンやバーンスタインとの逸話が散りばめられていて、コンサートの舞台裏をこっそり覗くような、またはスタッフとしてその場に参加していたような気持ちになりました。印象深かったのが、小澤さんが「英語が話せないから、周りが何を話してるのがわからなかった」という内容のことを頻繁に語っていること。

なぜ(もちろん音楽の才能はあったにせよ)英語もできない東洋人の若者(きっと“できない”のレベルがそもそも高かったのだと思いますが)が海外の音楽界で成功したのか?という疑問が自然と湧き上がってきたのですが、それはまさに本書の後半で村上さんが小澤さんに同様のことを質問していました。

そんな裏話も面白いのですが、指揮者と奏者の組み合わせで音楽がどのように変わるのかを聞き比べているのも興味深かったです。

私も聞いてみたい!と思ったのが【ベートーベン・ピアノ協奏曲第3番】の聞き比べ。

  1. ①カラヤンとグールド
  2. ②バーンスタインとグールド
  3. ③小澤征爾とゼルキン
  4. ④ザンデルリングと内田光子

①②の組み合わせについては、カラヤンとバーンスタインの音楽の方向性なども本書で語られていたこともあって、特に聞いてみたいなぁと思いました。

それとサイトウ・キネンとボストン・シンフォニーの両方で小澤さんが【マーラー・交響曲第1番】を指揮していて、その違いも興味をそそられました。

それについては村上さんがボストン・シンフォニーについて

「なんか、運転手付きの豪華なメルセデス・ベンツに乗って、あちこち周遊しているような雰囲気の演奏だったですね」

と表現し、サイトウ・キネンについては

「それに比べると、サイトウ・キネンの方はもっとスポーツっぽくて、ギヤが小気味よく入って小回りがきく車というか」

と表現しています。

すっごくわかりやすい比喩だと思うのですが、やっぱり音を聞いてみたい!という衝動に駆られますよね

で、Youtubeにアップされてないかな~と探していたら、こんなCDを見つけまして。

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』で聴いたクラシック [ 小澤征爾 ]

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まさにこの本で出てきた曲について集めたCD!

部分的に第○楽章のみの収録だったりするみたいですが、私が特に聞いてみたいと思った【ベートーベン・ピアノ協奏曲第3番】と【マーラー・交響曲第1番】も入っていて、これはもう買うしかない!です。

さらにカラヤンとグールドの【ベートーベン・ピアノ協奏曲第3番】の演奏で、カラヤンが演奏前に出したイレギュラーなステートメント(本を読んで、コンサートでこんなことあるんだ!?とびっくりしました)も収録されている、とのことなので興味津々です。

ここまでくると、小澤さんが生で指揮するところも見てみたいなぁと思うのですが、お年のこともあるし(現在84歳)難しいのかな…。

と、思っていたらYoutubeでこんな映像がアップされていたので、つい見入ってしまいました。イギリスのPromsでサイトウ・キネン・オーケストラが【ブラームス・交響曲第1番】を演奏した時のBBC放送のようです。練習風景も映っていて、小澤さんのお人柄や英語を流暢にお話しされている様子も見れる、貴重な映像だと思います。


Brahms: Symphony No.1 + Encore / Ozawa Saito Kinen Orchestra (1990 Movie Proms Live)